「持っている仮想通貨を貸すだけで、利息がもらえるって本当?」
「銀行預金よりずっと金利が高いけど、何かデメリットはないの?」
保有している仮想通貨を貸し出すことで、安定した収益(インカムゲイン)が期待できる「レンディング(貸し仮想通貨)」。特に長期保有を考えている投資家にとって、資産を有効活用できる魅力的なサービスです。
しかし、その高いリターンの裏側には、銀行預金とは全く異なる、仮想通貨特有のデメリットやリスクが潜んでいます。甘い言葉だけを信じて安易に始めてしまうと、大切な資産をすべて失ってしまう可能性すらあります。
この記事では、仮想通貨レンディングを始める前に、必ず理解しておくべき本質的なデメリットとリスクについて、分かりやすく解説します。
仮想通貨レンディングの仕組みをおさらい
デメリットを理解する前に、まずレンディングの基本的な仕組みを簡単に確認しておきましょう。
仮想通貨レンディングとは、自分が保有する仮想通貨を、取引所などのプラットフォーム(事業者)に一定期間貸し出し、その対価として利息(賃借料)を受け取るサービスです。
事業者は、借り受けた仮想通貨を、さらに別のユーザー(レバレッジ取引を行うトレーダーなど)に貸し出すことで収益を上げ、その一部を私たち貸し手に利息として還元します。
仮想通貨レンディングの5つの主要なデメリット・リスク
この仕組みの中に、以下のようなデメリットやリスクが内包されています。
カウンターパーティリスク(貸し倒れリスク)
これがレンディングにおける最大のリスクです。 カウンターパーティリスクとは、取引の相手方(この場合は、仮想通貨を貸している事業者)が、経営破綻などの理由で義務を果たせなくなるリスクを指します。
もしあなたが利用しているレンディングサービスの運営会社が倒産した場合、貸し出していた仮想通貨が一切返還されない「貸し倒れ」が発生する可能性があります。日本の銀行預金のように、預金保険制度による保護は一切ありません。高い金利は、このリスクを引き受ける対価であると認識する必要があります。
ハッキングリスク
レンディング事業者は、多くのユーザーから大量の仮想通貨を預かっているため、常にハッカーの標的となります。万が一、事業者のセキュリティが破られ、大規模なハッキング被害に遭った場合、あなたの資産も盗まれてしまう可能性があります。
価格変動リスク
レンディングによって、仮想通貨の「枚数」は着実に増えていきます。しかし、元の仮想通貨自体の価格が大きく下落すれば、日本円に換算した際の「総資産価値」は減少してしまいます。
例えば、1ETHをレンディングして、1年後に1.05ETHに増えたとしても、その間にETHの価格が半分になってしまえば、トータルでは大きな損失となります。枚数が増えることと、資産価値が上がることとは、必ずしもイコールではないのです。
機会損失のリスク(ロック期間)
多くのレンディングサービスでは、一度貸し出しを開始すると、契約期間が満了するまで、その仮想通貨を自由に引き出すことができません。
この「ロック期間」中に、貸し出している仮想通貨の価格が急騰したとしても、あなたはそれを売却して利益を確定させることができません。最高の売り時を指をくわえて見ているしかない、という「機会損失」が発生する可能性があるのです。
送金ミスによる資産喪失リスク
レンディングサービスを利用するためには、多くの場合、自分のウォレットや別の取引所から、指定されたアドレスに仮想通貨を送金する必要があります。この際、もし送金先のアドレスを1文字でも間違えてしまうと、その資産はブロックチェーンの迷子となり、二度と取り戻すことはできません。これはレンディングに限った話ではありませんが、資産を移動させる際に常に伴うリスクです。
DeFiレンディング特有のリスク
取引所などを介さず、プログラム(スマートコントラクト)によって自動で貸し借りが行われるDeFi(分散型金融)のレンディングも人気ですが、これにはさらに専門的なリスクが加わります。
- スマートコントラクトリスク: プログラムに予期せぬバグや脆弱性があり、それを悪用されて資産が抜き取られるリスク。
- ガバナンスリスク: プロトコルの運営方針が、自分にとって不利な方向に変更されるリスク。
まとめ:デメリットを理解し、許容できる範囲で利用する
この記事では、仮想通貨レンディングに潜む、見過ごされがちなデメリットやリスクについて解説しました。
- 最大のデメリットは、貸出先の事業者が倒産した場合に資産が返ってこない「カウンターパーティリスク」。
- その他にも、ハッキング、価格変動、機会損失といった複数のリスクが存在する。
- 銀行預金とは異なり、いかなる保護もなく、すべてのリスクは利用者自身が負う。
- 高いリターンは、これらの重大なリスクを引き受けることへの対価である。
仮想通貨レンディングは、決して「何もしなくても安全にお金が増える」魔法の杖ではありません。これらのデメリットを一つ一つ正しく理解し、その上で「このリスクなら許容できる」と判断できる範囲の、失っても生活に影響のない余剰資金で利用することが、賢明な投資家としての最低限の条件と言えるでしょう。