「ビットコインの価格って、米国株の動きに影響されるって本当?」
「仮想通貨に直接投資するのは怖いけど、関連する米国株なら興味がある」
一見すると全く異なる資産クラスである「仮想通貨」と「米国株」。しかし、近年、この二つの市場の連動性(相関性)は、多くの投資家が無視できないほどに高まっています。
この記事では、なぜ仮想通貨市場が米国株、特にハイテク株の動向に影響を受けやすいのかという理由から、仮想通貨・ブロックチェーン業界に深く関連する代表的な米国株(関連銘柄)までを、分かりやすく解説します。
なぜ仮想通貨と米国株は連動(相関)するのか?
かつて、仮想通貨は株式市場とは全く別の動きをする「独立した資産」と考えられていました。しかし、近年、特に2020年以降、両者の価格が同じような方向に動く「正の相関」が強まっています。
その背景には、主に2つの理由があります。
1. 機関投資家の参入
以前は個人投資家が中心だった仮想通貨市場に、ヘッジファンドや資産運用会社といったプロの「機関投資家」が本格的に参入してきました。彼らは、株式や債券など、様々な資産をポートフォリオに組み込んで運用しています。
彼らにとって、ビットコインは「ハイリスク・ハイリターンの成長資産(リスクアセット)」の一つとして位置づけられています。
そのため、世界経済の先行きに不透明感が高まると、彼らは株式(特にハイテク株)を売ってリスクを回避すると同時に、同じリスクアセットであるビットコインも売却する傾向があります。この結果、両市場が同じ方向に動きやすくなるのです。
2. 金融政策の影響
両市場は、米国の中央銀行(FRB)の金融政策に大きな影響を受けます。
- 金融緩和(利下げなど):
市場にお金が溢れ、投資家はより高いリターンを求めてリスクを取りやすくなります。この「リスクオン」ムードの中、資金は株や仮想通貨に向かいやすくなります。 - 金融引き締め(利上げなど):
市場のお金が減り、投資家はリスクを避けようとします。この「リスクオフ」ムードでは、安全な資産(ドルや国債)への逃避が起こり、株や仮想通貨からは資金が引き揚げられやすくなります。
このように、世界経済の大きな潮流を決定づける金融政策が、両市場に共通の追い風、あるいは逆風となるため、相関性が高まるのです。
特に相関性が高いのは「ナスダック総合指数」
米国株の代表的な指数には「NYダウ」や「S&P500」などがありますが、仮想通貨との相関性が特に高いと言われているのが「ナスダック総合指数」です。
ナスダックは、Apple、Microsoft、NVIDIAといった、テクノロジー関連の成長企業(グロース株)が多く上場している市場です。
仮想通貨もまた、ブロックチェーンという新しいテクノロジーへの期待によって価値が形成されているため、投資家層や値動きの性質が、ナスダックに上場するハイテク株と非常に似ているのです。
そのため、多くの市場関係者は、仮想通貨市場のトレンドを占う上で、ナスダックの動向を重要な先行指標として注視しています。
相関関係を見る上での注意点
- 相関は常に一定ではない:
両者の相関関係は、常に100%連動するわけではありません。時に、仮想通貨特有のニュース(ETF承認など)によって、株式市場とは全く異なる独自の動きを見せることもあります。 - 短期的なノイズ:
日々の細かな値動きレベルでは、必ずしも相関しないことも多々あります。相関性は、あくまで数週間〜数ヶ月といった、中長期的なトレンドを把握するための参考情報として捉えるのが良いでしょう。
仮想通貨・ブロックチェーン関連の代表的な米国株
仮想通貨に直接投資する以外に、関連する米国企業の株式に投資することで、間接的にこの分野の成長の恩恵を受ける方法もあります。
仮想通貨取引所関連銘柄
- コインベース・グローバル($COIN):
米国で唯一、株式市場に上場している大手仮想通貨取引所です。仮想通貨市場全体の取引が活発になれば、その収益も増加する傾向があるため、市場の盛り上がりを象徴する銘柄と見なされています。
マイニング(採掘)関連銘柄
- マラソン・デジタル・ホールディングス($MARA)
- ライオット・プラットフォームズ($RIOT)
これらは、ビットコインのマイニング(採掘)を専門に行う企業です。ビットコイン価格が上昇すれば、彼らが採掘するビットコインの価値も上がるため、その株価はビットコイン価格と非常に高い連動性を示す傾向があります。
ビットコインを大量保有する企業
- マイクロストラテジー($MSTR):
ソフトウェア企業ですが、企業の財務資産として、世界で最も多くのビットコインを保有していることで有名です。そのビジネスモデルは、もはや「ビットコインにレバレッジをかけた投資会社」のようになっており、株価はビットコイン価格に大きく左右されます。
関連銘柄に投資するメリットとデメリット
メリット
- 手軽さ: 証券会社の口座を通じて、株式と同じように手軽に投資できる。
- 規制・税制の明確さ: 株式としての法規制や税制が適用されるため、仮想通貨そのものより分かりやすい。
デメリット
- 個別企業の経営リスク: 仮想通貨市場が好調でも、その企業の経営判断の失敗や不祥事によって株価が下落するリスクがある。
- 完全な連動ではない: あくまで関連企業の株価であり、仮想通貨そのものの価格上昇を100%享受できるわけではない。
まとめ:二つの市場は無視できない関係に
この記事では、仮想通貨と米国株の密接な関係性について解説しました。
- 仮想通貨、特にビットコインの価格は、米国株(特にナスダック指数)と連動して動く傾向が強まっている。
- その背景には、機関投資家の参入や、米国の金融政策という共通の価格変動要因が存在する。
- 仮想通貨市場のトレンドを予測する上で、米国株市場の動向を無視することはできなくなっている。
- コインベース(COIN)やマラソン(MARA)といった関連銘柄に投資することで、間接的に仮想通貨市場に関わる方法もある。
仮想通貨と米国株は、異なる資産でありながら、グローバルな金融市場という大きな海の中では、同じ波に乗る船のような関係にあります。両方の市場の動きを視野に入れることで、より立体的で深い市場分析が可能になるでしょう。