「仮想通貨取引所の手数料、MakerとTakerで金額が違うけどどういう意味?」
「自分がどっちで取引しているのか、よく分からない…」
仮想通貨の取引を始め、手数料の料金表を見たときに「メイカー(Maker)」と「テイカー(Taker)」という言葉を目にして、疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
この2つは取引所における注文の出し方を区別するものであり、その違いを理解することは、取引コストを抑える上で非常に重要です。
この記事では、メイカーとテイカーの基本的な意味から、なぜ手数料に差がつけられているのかという仕組み、そしてそれぞれのメリット・デメリットについて初心者にも分かりやすく解説します。
仮想通貨取引所の「メイカー」と「テイカー」とは?
メイカーとテイカーは、取引所におけるあなたの注文が、市場の「流動性」に対してどのような役割を果たしたかによって決まります。
少し専門的に聞こえますが、本質はシンプルです。
- メイカー (Maker) = 市場を作る人
取引板(オーダーブック)に、まだ存在しない価格で新しい注文を出し、板を厚くする人(取引の選択肢を「作る」人)のことです。主に、すぐに約定しない「指値注文」がこれに該当します。 - テイカー (Taker) = 市場から取る人
取引板にすでに出されている既存の注文を、すぐに約定させる人(取引の選択肢を「取る」人)のことです。価格を指定しない「成行注文」などが、これに該当します。
市場を「お店」に例えるなら、メイカーは「商品を棚に並べる人」、テイカーは「棚に並んでいる商品をすぐに買っていく人」とイメージすると分かりやすいでしょう。
メイカーとテイカーの簡単な見分け方
自分がどちらの立場で取引したかは、注文方法によってある程度判断できます。
- 指値注文 (Limit Order) → メイカーになりやすい
「1BTC = 500万円になったら買う」というように価格を指定して注文を出し、その注文がすぐに約定せず、取引板に並んだ状態になれば、あなたはメイカーです。 - 成行注文 (Market Order) → 必ずテイカーになる
「今の市場価格ですぐに買う」というように価格を指定しない成行注文は、取引板に既にある注文を消費するため、必ずテイカーになります。
注意点:
指値注文であっても、テイカーになるケースがあります。例えば、現在の売り注文が「1BTC = 501万円」のときに、「1BTC = 502万円で買う」という指値注文を出すと、即座に501万円の注文と約定します。この場合、既存の注文を消費したと見なされ、テイカーとして扱われます。
なぜメイカー手数料は安く設定されているのか?
多くの取引所で、メイカー手数料はテイカー手数料よりも安く(場合によってはマイナス手数料、つまり報酬がもらえることも)設定されています。その理由は、取引所の生命線である「流動性」にあります。
- 流動性 = 取引のしやすさ、活発さのこと。
取引板にたくさんの注文が並んでいる(板が厚い)状態は、ユーザーが「買いたい時に買え、売りたい時に売れる」ため、流動性が高いと言えます。取引所にとって、この流動性の高さは非常に重要です。
- メイカーは、取引板に注文を並べることで、取引所の流動性を「提供」する貢献者です。
- テイカーは、取引板から注文を取り除くことで、取引所の流動性を「消費」する利用者です。
そのため、取引所は流動性を提供してくれるメイカーを優遇し、取引を活発にしてもらうインセンティブとして手数料を安く設定しているのです。
メイカー注文とテイカー注文のメリット・デメリット
手数料の観点以外にも、それぞれの注文方法にはメリットとデメリットがあります。
メイカー注文(主に指値)
- メリット: 手数料が安い。自分の希望する価格で取引できる可能性がある。
- デメリット: 注文がすぐに約定せず、価格が変動してしまい、結局取引が成立しない「機会損失」のリスクがある。
テイカー注文(主に成行)
- メリット: 確実に、そして即座に注文が約定する。取引のタイミングを逃したくない場合に有効。
- デメリット: 手数料が高い。注文が殺到している時などは、想定よりもわずかに不利な価格で約定する「スリッページ」が発生することがある。
取引手数料を抑えたいなら「メイカー」を意識しよう
取引手数料は、一度の金額は小さくても、積み重なると利益を圧迫する大きなコストになります。特に短期的に何度も売買を繰り返すスタイルの場合、この差は無視できません。
もし取引を急いでいないのであれば、現在の市場価格から少しだけ離した価格で指値注文を出すことで、メイカーとして取引が成立しやすくなり、手数料を節約することができます。
まとめ:手数料の仕組みを理解して賢く取引しよう
この記事では、仮想通貨取引におけるメイカーとテイカーの違いについて解説しました。
- メイカー: 取引板に新しい注文を「作る」人(主に指値注文)。取引所の流動性に貢献するため、手数料が優遇される。
- テイカー: 取引板の既存の注文を「取る」人(主に成行注文)。流動性を消費するため、手数料は相対的に高い。
- 手数料の違い: 取引所が、取引を活発にしてくれるメイカーを優遇するための仕組み。
- 使い分け: 取引コストを抑えたいならメイカー、スピードと確実性を重視するならテイカーが適している。
メイカーとテイカーの役割を理解することは、単に手数料を節約できるだけでなく、取引所のビジネスモデルや市場の仕組みそのものへの理解を深めることにも繋がります。