仮想通貨チャートは「ドル建て」で見るべき?円建てとの違いや理由を解説

「仮想通貨のチャートって、取引所によって価格が違うのはなぜ?」

「海外のニュースだとビットコインの価格がドルで報道されるけど、円で見てちゃダメなの?」

仮想通貨のチャートを見始めたとき、多くの人が疑問に思うのが「円建て」と「ドル建て」の価格の違いです。同じビットコインのはずなのに、なぜ見るサイトによって価格が異なり、どちらを基準に見れば良いのでしょうか。

結論から言うと、グローバルな市場である仮想通貨のトレンドを正確に把握するためには、「ドル建て」チャートの確認が非常に重要になります。

この記事では、なぜドル建てチャートが重要視されるのかという理由から、円建てチャートとの違い、そして両者をどのように使い分ければ良いのかまでを、分かりやすく解説します。

なぜ仮想通貨は「ドル」が基準なのか?

仮想通貨は、特定の国に依存しないグローバルなデジタル資産ですが、その取引における事実上の基軸通貨は「米ドル(USD)」です。

これは、FX(為替)市場や、金・原油といったコモディティ市場で、あらゆる通貨や商品の価格が米ドルを基準に表示されるのと全く同じ理由です。

  • 世界最大の取引量:
    世界中の仮想通貨取引所で、最も取引量が多い通貨ペアは、BTC/USD(ビットコイン/米ドル)やETH/USD(イーサリアム/米ドル)です。
  • ステーブルコインの存在:
    USDT(テザー)やUSDC(USDコイン)といった、米ドルに価値が連動する「ドル建てステーブルコイン」が、取引の潤滑油として広く利用されています。
  • 機関投資家の参加:
    市場に大きな影響力を持つ米国の機関投資家やファンドは、当然ながら米ドルを基準に取引を行っています。

このように、世界の仮想通貨取引の中心は、圧倒的に米ドルで行われているのです。

「ドル建て」と「円建て」チャートの主な違い

日本の取引所で見慣れている「円建て」チャートと、「ドル建て」チャートには、主に2つの違いがあります。

表示される価格

当然ですが、表示される価格の単位が異なります。

  • ドル建て: 1 BTC = 70,000 USD
  • 円建て: 1 BTC = 10,500,000 JPY
    (※為替レートが1ドル=150円の場合)

為替レート(ドル/円)の影響

これが最も重要な違いです。円建ての仮想通貨価格は、「ドル建ての仮想通貨価格 × ドル/円の為替レート」という計算式で、おおよそ決まります。

つまり、円建てチャートの値動きには、仮想通貨そのものの価値の変動に加えて、「ドルと円の為替相場の変動」という、もう一つの変動要因が含まれているのです。

例えば、

  • ビットコインのドル建て価格は動いていない
  • しかし、為替相場で急激な円安(ドル高)が進んだ

この場合、円建てのビットコイン価格だけが上昇する、という現象が起こります。これは、ビットコインの価値が上がったのではなく、日本円の価値がドルに対して下がったことが原因です。

なぜ、わざわざ「ドル建て」チャートを見るべきなのか?

この為替の影響があるにもかかわらず、なぜ世界のトレーダーはドル建てチャートを重視するのでしょうか。

世界の投資家の心理が反映されるから

前述の通り、仮想通貨市場のメインプレイヤーは、米ドルで取引をしています。彼らの売買動向や心理が、市場の大きなトレンドを作り出します。為替というノイズを取り除いたドル建てチャートを見ることで、世界の投資家たちが今、何を考えているのかを、より純粋な形で読み取ることができます。

テクニカル分析が機能しやすいから

チャートパターンやテクニカル指標といった「テクニカル分析」は、より多くの市場参加者が意識しているチャートで機能しやすい、という性質があります。世界で最も見られているドル建てチャートは、まさにその基準となるチャートです。

重要な価格ライン(節目)がドル基準だから

「ビットコインが、過去最高値の69,000ドルを更新した」

「心理的な節目である100,000ドルを目指す展開」

といったニュースで語られる重要な価格は、常にキリの良いドル価格です。

世界のトレーダーは、「1BTC = 1,000万円」といった円価格の節目はほとんど意識していません。彼らが意識するドル価格の節目で、大きな売りや買いが発生しやすいため、この価格帯を把握しておくことは極めて重要です。

「円建て」と「ドル建て」チャートの使い分け方

では、私たちはどちらのチャートを見れば良いのでしょうか。

  • 最終的な損益の確認は「円建て」で:
    私たちが日本で生活している以上、最終的な利益や損失は日本円で計算する必要があります。自分の資産が円換算でいくらになっているかを確認するのは、円建てチャートの役割です。
  • 市場の大きなトレンドや分析は「ドル建て」で:
    これから価格が上がりそうか、下がりそうか、といった世界的な市場の方向性を分析する際は、ドル建てチャートを見るのが基本です。

この2つを併用し、「ドル建てチャートで世界の流れを読み、円建てチャートで自分の損益を管理する」という視点を持つのが理想的です。

ドル建てチャートを確認できる便利なツール

ドル建てのチャートは、専門的なツールを使わなくても、以下のようなサイトで誰でも無料で見ることができます。

  • TradingView(トレーディングビュー):
    世界中のトレーダーが利用する、最も標準的なチャート分析ツール。仮想通貨だけでなく、株や為替など、あらゆる金融商品のチャートを高度に分析できます。
  • CoinMarketCap / CoinGecko:
    仮想通貨の時価総額ランキングサイト。各通貨の詳細ページで、ドル建ての価格チャートを簡単に見ることができます。

まとめ:グローバルな視点を持つためのドル建てチャート

この記事では、仮想通貨のチャートを「ドル建て」で見る重要性について解説しました。

  • 仮想通貨市場の取引は、米ドルが事実上の基軸通貨となっている。
  • 円建てチャートには、仮想通貨の価値変動に加えて、為替レートの変動も含まれてしまう。
  • 世界の投資家が意識しているドル建てチャートを見ることで、市場のトレンドや重要な価格帯をより正確に把握できる。
  • 市場分析は「ドル建て」、損益管理は「円建て」と、両者を使い分けるのが賢明。

日本の取引所を使っていると、つい円建ての価格ばかりに目が行きがちです。しかし、一歩引いてドル建てのチャートを見る習慣をつけるだけで、グローバルな視点から市場を俯瞰できるようになり、投資判断の精度も大きく向上するでしょう。