「仮想通貨を何回かに分けて買ったら、自分がいくらで買ったのか分からなくなってしまった…」
「今の価格って、儲かってるの?それとも損してるの?」
仮想通貨投資を行う上で、多くの人が直面するのが、このような「自分の購入価格がいくらなのか」という問題です。特に、価格が変動する中で何度も買い増し(ナンピン買い)をしていると、正確な取得価格の把握は難しくなります。
この問題を解決し、自身の投資状況を正しく管理するために不可欠な知識が「平均取得単価」です。
この記事では、仮想通貨の平均取得単価の基本的な意味から、なぜその計算が重要なのか、そして具体的な計算方法までを、初心者にも分かりやすく解説します。
仮想通貨における「平均取得単価」とは?
仮想通貨における平均取得単価とは、その名の通り「1通貨あたり、平均していくらで取得したか」を示す数値のことです。
例えば、1BTCを500万円の時に購入し、その後、価格が600万円に上がった時に、もう1BTC買い増したとします。この場合、あなたは合計2BTCを1100万円(500万円 + 600万円)で取得したことになります。
この時の平均取得単価は、以下の通りです。
- 1100万円 ÷ 2BTC = 550万円/BTC
このように、複数回にわたって異なる価格で購入した仮想通貨の、1通貨あたりの平均購入価格を算出したものが「平均取得単価」です。
なぜ平均取得単価の計算が重要なのか?
平均取得単価を把握しておくことには、主に3つの重要な理由があります。
正確な損益を把握するため
自分の平均取得単価が分かって初めて、現在の市場価格と比較して、自分が利益(含み益)が出ている状態なのか、損失(含み損)が出ている状態なのかを正確に判断できます。これが分からなければ、感情的な取引に繋がりやすくなります。
税金計算(確定申告)に必須だから
仮想通貨の取引で得た利益は、原則として課税対象となり、確定申告が必要です。その利益を計算する際には、「売却価格」から「取得価額(取得にかかった費用)」を差し引く必要があります。この「取得価額」を算出するための基礎となるのが、平均取得単価です。国税庁も、取得価額の計算方法として「移動平均法」などを例示しており、正確な計算が求められます。
戦略的な投資判断の基準になるから
自分の平均取得単価(コスト)を把握していると、「この価格を上回ったら利益確定を検討しよう」「平均取得単価まで下がってきたら、買い増しを考えよう」といった、より戦略的で冷静な投資判断を下すための明確な基準を持つことができます。
平均取得単価の基本的な計算方法(移動平均法)
仮想通貨の平均取得単価の計算方法として、国税庁も示している最も一般的な方法が「移動平均法」です。これは、仮想通貨を購入するたびに、平均取得単価を再計算していく方法です。
計算式は以下の通りです。
- (前回までの取得総額 + 今回の購入金額) ÷ (前回までの保有数量 + 今回の購入数量) = 新しい平均取得単価
【計算例】
- 1回目:1BTC を 500万円で購入
- 平均取得単価:500万円/BTC
- 2回目:0.5BTC を 350万円(単価700万円/BTC)で買い増し
- 取得総額:500万円 + 350万円 = 850万円
- 保有数量:1BTC + 0.5BTC = 1.5BTC
- 新しい平均取得単価:850万円 ÷ 1.5BTC = 約566.7万円/BTC
このように、購入の都度、総額と総量を更新して割り算をすることで、常に最新の平均取得単価を維持します。
平均取得単価を計算する際の注意点
- 購入手数料を含める: 仮想通貨を購入した際に支払った取引手数料は、「取得価額」の一部です。税務上のルールでも、購入代金だけでなく手数料も含めた金額で計算する必要があるため、忘れないようにしましょう。
- 一部売却した場合: 保有している仮想通貨の一部を売却しても、残りの通貨の平均取得単価は変わりません。変わるのは「保有数量」と「取得総額」です。
- 複数の取引所を利用している場合: 同じ種類の仮想通貨を複数の取引所で購入している場合は、それら全ての取引を合算して、通貨ごとに一つの平均取得単価を計算する必要があります。
平均取得単価の簡単な管理方法
手計算での管理は、取引回数が増えると非常に煩雑になります。そこで、以下のような方法を活用するのが一般的です。
- 取引所の機能を利用する:
日本の多くの仮想通貨取引所では、その取引所内での取引に限って、平均取得単価を自動で計算し、表示してくれる機能を提供しています。まずはこの機能を確認してみましょう。 - 損益計算ツールを利用する:
複数の取引所を利用している場合や、確定申告を見据える場合は、「Gtax」や「Cryptact」といった専門の損益計算ツールを利用するのが最も効率的です。各取引所の取引履歴ファイルをアップロードするだけで、自動的に平均取得単価や年間の損益を計算してくれます。 - スプレッドシートで自己管理する:
ExcelやGoogleスプレッドシートを使い、取引日時、通貨名、売買の別、数量、価格、手数料などを記録していく方法です。計算式を組んでおけば、自分だけの詳細な取引記録帳を作成できます。
まとめ:正確な単価把握が冷静な投資判断に繋がる
この記事では、仮想通貨の平均取得単価について、その重要性と計算方法を解説しました。
- 平均取得単価は、複数回に分けて購入した仮想通貨の、1通貨あたりの平均購入価格のこと。
- 正確な損益の把握、税金計算、そして投資戦略の立案に不可欠な指標。
- 計算には、購入の都度、単価を更新していく「移動平均法」が一般的で、購入手数料も含める必要がある。
- 取引所の機能や専門の損益計算ツールを活用することで、管理の手間を大幅に削減できる。
自分の投資の現在地を客観的に知るための羅針盤、それが平均取得単価です。どんぶり勘定ではなく、正確な数字を把握する習慣を身につけることが、長期的に仮想通貨と付き合っていく上での、重要な第一歩と言えるでしょう。