仮想通貨の別名は「暗号資産」|なぜ呼び方が変わった?法律上の定義を解説

「仮想通貨って、『暗号資産』とも呼ばれるけど、どっちが正しいの?」

「なぜ、わざわざ呼び方が2つもあるの?」

ニュースやメディアで、ある時は「仮想通貨」、またある時は「暗号資産」と呼ばれているのを目にして、混乱した経験を持つ方は少なくないでしょう。これらは、指し示しているものは同じですが、その背景には法律の改正と、国際的な潮流が関係しています。

この記事では、仮想通貨の「別名」である暗号資産という呼称がなぜ使われるようになったのか、その歴史的な経緯と法律上の定義、そして両者のニュアンスの違いについて、分かりやすく解説します。

結論:「仮想通貨」と「暗号資産」は基本的に同じもの

まず結論から言うと、現在、日本で「仮想通貨」と「暗号資産」という言葉は、基本的に同じものを指しています。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などは、仮想通貨でもあり、暗号資産でもあります。

では、なぜ2つの呼び方が存在するのでしょうか。簡単に言うと、「暗号資産」が法律上の正式名称であり、「仮想通貨」は古くからの通称(ニックネーム)という関係性になっています。

なぜ「暗号資産」という呼び方が生まれたのか?

「仮想通貨」という呼称が一般的だったにもかかわらず、日本政府や金融庁が「暗号資産」という言葉を使い始めたのには、主に2つの大きな理由があります。

国際的な呼称との整合性

G20(主要20カ国・地域)などの国際会議の場では、英語で「Crypto Asset(クリプトアセット)」という呼称が標準的に使われています。これを直訳したのが「暗号資産」です。

世界各国と金融規制について議論を進める上で、日本だけが「Virtual Currency(仮想通貨)」という異なる言葉を使い続けるのは、混乱を招く可能性があります。国際的な基準に合わせる、というグローバルな視点が、呼称変更の大きな理由の一つです。

「通貨」という言葉がもたらす誤解の防止

もう一つの、そしてより重要な理由が、投資家保護の観点です。

「仮想通貨」という言葉は、日本円や米ドルのような、国がその価値を保証している「法定通貨(Legal Tender)」との誤解を生みやすい、という問題点が指摘されていました。

  • 法定通貨: 国の中央銀行が発行し、法律によって価値が裏付けられている。価格の安定性が比較的高い。
  • 仮想通貨: 国や銀行のような発行・管理主体がおらず、価値の裏付けがない。価格の変動が非常に激しい。

あたかも仮想通貨が「国が認めた安定した通貨」であるかのような誤解を与え、そのリスクを十分に認識しないまま投資してしまう人を減らすために、「資産」としての性質をより正確に表す「暗号資産」という呼称が採用されることになったのです。

法律上の正式名称は「暗号資産」

この流れを決定づけたのが、2019年5月に成立し、2020年5月に施行された、改正資金決済法および改正金融商品取引法です。

この法改正により、法律上の正式名称が「仮想通貨」から「暗号資産」へと変更されました。これ以降、金融庁や、登録事業者である国内の仮想通貨取引所は、公式な場面では「暗号資産」という呼称を使用することが義務付けられています。

メディアによって呼び方が違うのはなぜ?

法律上の正式名称が「暗号資産」であるにもかかわらず、なぜ今でも多くのニュースやメディアで「仮想通貨」という言葉が使われているのでしょうか。

これは、法的な正確性よりも、一般への分かりやすさと浸透度を優先しているためです。「仮想通貨」という言葉は、長年にわたって使われてきたため、多くの人々にとって馴染み深く、直感的に理解しやすい言葉となっています。

そのため、メディアによっては、記事のタイトルや冒頭で「仮想通貨(暗号資産)」と併記したり、文脈に応じて両者を使い分けたりするなどの工夫が見られます。

仮想通貨(暗号資産)の法律上の定義

ちなみに、資金決済法では、「暗号資産」は主に以下の2つの要件を満たすものとして定義されています。

  1. 不特定多数の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨と相互に交換できる
  2. 電子的に記録され、移転できる

そして、重要な点として「法定通貨または法定通貨建ての資産ではない」ということも明確に規定されています。

まとめ:「暗号資産」が正式名称、「仮想通貨」は通称

この記事では、仮想通貨とその別名である暗号資産について、その背景を解説しました。

  • 「仮想通貨」と「暗号資産」は、指し示すものは基本的に同じ。
  • 2020年の法改正により、法律上の正式名称は「暗号資産」に統一された。
  • 呼称変更の背景には、国際基準への対応と、「法定通貨」との誤解を防ぐという投資家保護の目的がある。
  • 現在、「暗号資産」が正式名称、「仮想通貨」は世間に広く浸透した通称として、併用されている状況。

どちらの言葉が使われていても、その本質やリスクが変わるわけではありません。しかし、この呼び方の違いの背景を知ることで、仮想通貨が社会の中でどのように位置づづけられようとしているのか、その大きな流れを理解することができるでしょう。