仮想通貨のトークンの規格とは?ERC-20などの役割を初心者向けに解説

「このトークンはERC-20規格に準拠しています」

「BEP-20のトークンを送金する際は、ネットワークに注意してください」

仮想通貨の世界を調べていると、「ERC-20」や「BEP-20」といった謎のアルファベットと数字の組み合わせに出会うことがあります。これらは「トークンの規格」と呼ばれ、仮想通貨がスムーズに機能するためのルールブックのようなものです。

この記事では、「トークンの規格とは何か?」という基本的な疑問に答え、なぜそれが必要なのか、そして代表的な規格の種類について初心者にも分かりやすく解説します。

トークンの規格とは「共通のルールブック」のこと

トークンの規格とは、一言でいえば「特定のブロックチェーン上で新しいトークン(仮想通貨)を作る際の共通のルールブック」です。

少し分かりにくいので、身近なもので例えてみましょう。日本中のコンセントが、なぜ全て同じ形をしているか考えたことはありますか?

もし、パナソニックのコンセントは丸型、ソニーは三角、日立は四角…と、メーカーごとに形がバラバラだったら、私たちは家電製品を買うたびに、そのメーカー専用の壁のコンセントを用意しなければならず非常に不便です。

コンセントの形や電圧に「JIS規格」という共通のルールがあるからこそ、私たちはどのメーカーの家電でも安心して使うことができます。

トークンの規格も、これと全く同じです。イーサリアムというブロックチェーン上で誰かが新しいトークンを作ろうと思った時に、「トークンにはこういう機能を持たせなさい」「こういう命令にはこう応えなさい」という共通のルール(規格)が定められています。

このルールに従って作られたトークンは、全て同じ”コンセントの形”をしています。そのためウォレットや取引所の開発者は、新しいトークンが登場するたびに一つ一つ特別なプログラムを組む必要がなく、同じ規格のトークンなら全てスムーズに取り扱うことができるのです。

なぜトークンの規格は必要なのか?

もしトークンの規格がなければ、開発者はトークンを作るたびにウォレットや取引所に「うちのトークンはこういう独自の仕様なので、特別に対応してください」とお願いして回らなければなりません。これは、開発者にとってもサービス提供者にとっても非常に非効率です。

共通の規格があることで、以下のような大きなメリットが生まれます。

  • 開発の効率化: 開発者はゼロから全ての機能を設計する必要がなく、ルールブックに従うだけで簡単に新しいトークンを発行できる。
  • 相互運用性の確保: 同じ規格のトークンであれば様々なウォレットやDAppsが簡単に対応できるため、トークンの利用範囲が広がる。
  • 安全性の向上: 広く使われている規格は多くの専門家によって安全性が検証されているため、致命的なバグが潜んでいるリスクが低い。

代表的なトークンの規格

現在、数多くのブロックチェーンにそれぞれ独自のトークン規格が存在します。ここでは、特に有名でよく目にする代表的な規格を3つ紹介します。

ERC-20(イーサリアム)

「ERC-20」は、数ある規格の中で最も有名で、広く使われている規格です。イーサリアムのブロックチェーン上で発行される代替可能なトークン(Fungible Token)のルールを定めています。

  • 特徴:
    代替可能とは、「どのトークンも同じ価値を持つ」ということです。あなたの持っている1,000円札と、私の持っている1,000円札が同じ価値で交換できるのと同じです。
  • 代表例:
    ステーブルコインのUSDTやUSDC、取引所トークンのUNI(Uniswap)など、私たちが目にするアルトコインの多くはERC-20規格で作られています。

ERC-721(イーサリアム)

「ERC-721」もイーサリアム上の規格ですが、こちらは「NFT(非代替性トークン / Non-Fungible Token)」のルールを定めています。

  • 特徴:
    非代替性とは、「一つ一つがユニークで、他に同じものが存在しない」ということです。シリアルナンバー入りの限定アート作品のように、それぞれが固有の価値を持ちます。
  • 代表例:
    Bored Ape Yacht Club (BAYC) などのデジタルアートや、ブロックチェーンゲームのアイテム、キャラクターなどがこの規格で作られています。

BEP-20(BNBスマートチェーン)

「BEP-20」は、世界最大級の仮想通貨取引所バイナンスが開発した「BNBスマートチェーン(BSC)」上で利用されるトークンの規格です。

  • 特徴:
    基本的な機能はERC-20とほぼ同じですが、BNBスマートチェーン上で動作するため、イーサリアムに比べて取引手数料(ガス代)が安く、処理速度が速いというメリットがあります。

まとめ:規格を知ればトークンの「出身地」がわかる

トークンの規格は、一見するとただの専門用語に思えるかもしれません。

しかし、「このトークンはERC-20規格だ」と分かれば、「なるほど、イーサリアムという大きな経済圏で生まれた、一般的な通貨のようなトークンなんだな」というように、そのトークンの「出身地」や「性質」を理解することができます。

特に、ウォレット間でトークンを移動させる際には、この規格(ネットワーク)を正しく認識することが資産を失わないために非常に重要になります。

全ての規格を暗記する必要はありません。「トークンの規格とは、そのトークンがスムーズに世の中で機能するための共通のルールブックなんだ」と覚えておくだけで、あなたの仮想通貨への理解はきっと一段階深まるはずです。